2016/04/30

"Zootopia" 『ズートピア』

監督:バイロン・ハワード、リッチ・ムーア、ジャレッド・ブッシュ
出演:ジニファー・グッドウィン、ジェイソン・ベイトマン、イドリス・エルバ
音楽:マイケル・ジアッチーノ
108分

素晴らしいです!

大型動物にしかなれないとされていた警察官にウサギながらも採用となったジュディ。
小さな体に大きな夢を抱いている彼女は、期待とは裏腹に配属された駐車違反の取り締まり係に嫌気がさしていた。そんなある日、多くの草食哺乳類が行方不明になるという怪事件が発生。
ジュディはその事件の手がかりとなるキツネのニックに助けを求めるのだが、彼にはまるで協力する気がない。そしてジュディはキツネに対するトラウマを抱えていた。果たして彼女はこの試練を乗り越え、事件を解決することが出来るのか…?


なんやかんやで鑑賞から2ヶ月近く経ってからのレビューになってしまいました。楽しみに待っていたみなさん、すみません!笑
その理由を説明すると、それぐらい深い映画だったわけなんです!
全然考えがまとまらず、考えれば考えるほど新たな見方、考え方ができる、そんな特殊なアニメーションでした。

というわけでディズニーやりました!
本当に素晴らしい出来です。こんなにしっかりしたアニメーションは『インサイド・ヘッド』ぶり!(ってめっちゃ最近!笑)

ただこんなに良く出来た作品がピクサーではなく、ディズニーから生まれたのはちょっと意外でした。
というのもディズニーの作品はまぁまぁな作品が多いから。大ヒットした『アナと雪の女王』や『ベイマックス』も観ていて楽しいけど、それ以上でも以下でもなかった。
どちらの作品も印象に残った場面はないに等しいですし、観てる間にどんなことを感じたとかもまったく憶えていません笑

ただ今回の『ズートピア』は違いました。観終わったあとに話をしたくなりましたし、最初にも述べた通り、ふとこの作品のことを考えていて新たな見方を発見したりもしました。
それぐらいテーマが深くしっかりしており、かつ限りなく解釈の幅が広いとても秀逸な作品なのです!

さてこの作品の見どころはずばり作品そのものが描くテーマの深さでしょう。

この映画全編を通して描かれているのが、人種や民族、性別、そして階級ゆえの差別や偏見というとんでもなく大人向けなテーマなのです。
さてここで一旦立ち止まってよーく考えてみてください。これらのことって実はディズニーの世界ではむしろ「存在しない」ものとして扱われていたものですよね
世界はひとつとか歌っているぐらい、ディズニーの世界観ではあり得ない概念なんです。

しかしこのご時世、これらのことを無視した作品が受け入れられるほど観客もバカではありません。

そこでディズニーのクリエイターたちはそれを逆手にとり、これまで自らタブーとしてきたものの存在を認めテーマとして面白おかしく組み込みながら、しっかりエンターテインメントとして成立させ、しかも万人に受け入れられる形で1つの作品を作り上げました。その心意気にまず拍手!


それにしても観ている最中ずっと感じていました。こんな映画アメリカにしか作れないな、と。これだけ広い多様性の上にここまで発達した社会が成り立っている国は正直他に思い当たりません。
そしてアメリカの面白いところは彼ら自身それを自覚しているところ。そしてそしてズートピアに出てくるキャラ達もそう。

全員が全員自らがどういう動物かを理解しており、そのイメージに合った生き方を半ば強制されているように生きています。しかしそのうちの何人かはそれを覆してやろうと必死にもがきます。
その姿を見て応援したくなるのは自分だけではないはず!
その代表がジュディというキャラクターであり、彼女が観客の心を開始早々に捉えるのはもはや必然。このセットアップ、実に巧妙です。

アメリカがアメリカたる所以である多様性を支えているのはお互いの人種や民族、そして考え方の違いまで理解して初めてこの国が成り立っているという事実。それを寓話的に我々に再認識させる、それがこの作品の隠されたテーマなのかなと感じました。

折しも2016年はアメリカのリーダーを決める重要な年。
多くの移民を強制帰国させようとしている人が第1候補として各地で祭り上げられているこの状況での公開は、今一度アメリカという国がどれだけ特殊なのか、そしてお互いを尊重し合うという、人間としての基本を改めて考えさせられる、いい機会になったのではないかなと。(もしやディズニーはこのことも考慮して作ったのだろうか…?)

さて、あくびが出そうな難しい話はここいらでやめておいて、映画について!

この映画、一番すごいところはこれだけ重たいテーマなのに、本当に信じられないほどに暗くならない、その語り口にあるでしょう。ダークさを保ちつつ、ポップにも見せるこのトーンは本当にすごいとしかいいようがありません。


それを支えているのが随所に出てくるコミカルなシーンですね。
とりわけトレーラーにも出てくるDMVのナマケモノのシーンは分かっていてもニヤニヤしてしまいました笑

ちなみにDMVというのはアメリカで免許の取得や車の登録、そしてIDの発行などの際に必ず行かねばならない場所で、働いている人ほぼ全員が時間にルーズ(予約を取っても1時間待たされるのは当たり前)で、しかもお役所なのでかなり高慢な態度で接してくることで有名。また無事試験をパスしても免許が手元に届くまで何ヶ月も待たされるというケースもザラで、本当に仕事してるのかと疑うぐらい。
ただそれも本作で描写されているようにナマケモノが運営しているというならまぁ納得かな笑

そしてもう一つの見どころとして、何と言ってもキャラクターたちの可愛さですね笑
やはりここは他のアニメーションスタジオとは比べものになりません。ピクサーでさえもキャラの可愛さで言ったら「…。」な感じですが、ディズニーはよく分かっている。

今回の主人公ジュディとニックの造形の良さはもちろん、2人のバディぶりにも目を離せませんでした。この組み合わせめっちゃええですね〜笑

ちなみに僕が一番好きなキャラは『ゴッドファーザー』のドン・コルレオーネ的なキャラのネズミのミスター・ビッグ。小さいのにすごい存在感だったなぁ笑
しかもニックと因縁の仲になった経緯もかなり面白い笑


さてここまでいいことづくめな本作ですが、1つだけ残念だった点が。
それがガゼルというキャラの存在。なんかただシャキーラを出したかっただけなのが見え見えで、全然お話に絡んでこなかったのは拍子抜け。
どうせなら彼女のコンサートの告知を前半から出していって、途中ズートピアが危機に陥った際に中止になるかも…っていうサイドストーリーが出てきても良かったんじゃないかなと思います。
そうしたほうがクレジット中も盛り上がったでしょうし。

それがあればまさしくパーフェクトな作品になったに違いありませんが、まぁ細かいことなので大目に見ましょう!


さてまとめですが…正直いろいろありすぎなので、うまくまとめられません。笑
というわけで観てもらうのが一番手っ取り早いです!笑
間違いなく2016年を代表する1本として後世に語り継がれることでしょう!

一刻も早く劇場へ!

トレーラー

IMDb            8.3/10
Rotten Tomatoes        98%
metacritic          77/100

日本公開:2016/04/23

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