監督:ロン・ハワード
出演:クリス・ヘムズワース、キリアン・マーフィー、ベンジャミン・ウォーカー
撮影:アンソニー・ドッド・マントル
音楽:ロケ・バニョス
121分
期待してたほどじゃなかったけど、自分はそれなりに楽しめた!
捕鯨船の一等航海士であるオーウェンは経験豊富ながら階級が原因で船長になれずにいた。彼はある日、若く経験の浅い船長ジョージ率いるエセックス号の乗組員となる。鯨の群れになかなか出会わない一行は普段行くことがないほど陸地から離れた沖へと向かう。そこで彼らを待ち受けていたのは、今まで見たことがないほど巨大な白い鯨であった…。
まず最初にはっきりさせましょう。
鯨との闘いはこの作品のメインテーマではありません。
邦題はかなり間違っています。
この作品で描かれているのは階級間の男同士の闘いであり、極限状態に追い込まれた人間の弱さと強さであり、そして自然の前でいかに人類が無力であるか、ということです。
その描き方は、さすがロン・ハワード。前作『RUSH/プライドと友情』でも見られた熟練した演出力で丁寧に魅せてくれます。
が、これらがドラマを生んでいたかといいますと、まぁ失敗でしょう。
というのも、どれもいまいち突っ込みきれていないというか、それぞれ表面をなぞってるだけに感じられます。それぐらい薄い。
僕はこの作品結構楽しみにしていたので、自分から何かを得ようと観ている間必死でしたが、そういうの抜きで観た場合、何が言いたかったのか結局最後まで分からないんじゃないか、という気がします。
それならそれで鯨との闘いにフィーチャーしちゃって海洋アドベンチャーものにしても良かったんじゃないかなと思いますが、そこは古典中の古典『白鯨』をさらにもうひとつ遡った原作をベースにしていますから、先にも述べたように、この映画では胸アツな冒険要素は(残念ながら…)極限まで少なくしてあります。
もともと今年3月13日に全米で公開予定だったんですが、大人の事情で(どんな事情か知りませんが…)なぜか9ヶ月後の今になって公開です。
僕の推測では突如3Dで公開することにした、もしくはCGが間に合わなかった、というのが理由かなと考えています。やっぱりオスカーを狙いにいったんでしょうか…。
この作品の良かったところも少し。
やはりアンソニー・ドッド・マントルのカメラワークは素晴らしい!
今回も変幻自在にありとあらゆるところにカメラを仕掛け、 独特の視点を生み出しています。この人の技術的にすごいところは、構図もそうですが、フォーカスにまったくブレがないところ。あんなにとっ散らかった構図のオンパレードなのに、フォーカルポイントが明らかだからとても見やすいし目で追いやすい!
そしてそんな彼の奇妙なカメラワーク(←褒めてます)に応えたVFXチームも素晴らしい。とてつもなく世界観にマッチしています!
画面とのなじみ方で云ったら違和感はちょっとありますが、作品の世界観を構築するのに効果的な使われ方でした。
さて役者陣のことも少し。
主演のクリス・ヘムズワースは自ら企画を持ち込んだというから、やはり気合の入り方が違います。ただやっぱり肉体派のイメージなのでもうちょっとアクションを観たかったな、という感じ。作品がそういうんじゃないんですが…笑
そして彼のライバル役となる船長を演じたベンジャミン・ウォーカーも素晴らしい。
エリートでありながら誠実に海と向き合い、"いい階級"であることによって就任した船長の役割と自身の経験の浅さとの狭間で苦悩する役をうまく演じていました。
が、その他のキャラクターはちょっとイマイチ。
キリアン・マーフィーはほとんど誰だか分からないぐらい影が薄く、現代のパート(回想に入る前のパート)ではベン・ウィショーとブレンダン・グリーソンとかなりの実力派が出ているのに、そもそもこの「回想」という構成がうまく機能していないので、足を引っ張っている印象を受けます。それぞれいい演技しているんですけどね…。
まぁまとめると、僕のようにVFXや一風変わったシネマトグラフィーが好きというあなたは観て損はないですが、普通に観て楽しめる作品かと聞かれると間違いなく違うと言えるので、観客を選ぶ作品だということは念頭に置いたほうがいいでしょう。
トレーラー
IMDb 7.1/10
Rotten Tomatoes 42%
日本公開:2016/01/16
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