監督:ピーター・ソーン
出演:レイモンド・オチョア、ジェフリー・ライト、フランシス・マグドーマンド
音楽:ジェフ・ダナ、マイケル・ダナ
100分
まぁまぁですかね。
弱虫なアパトサウルスのアーロは突如家族と離れ離れに。
そこで人間の少年スポットと出会い、家族の元へ帰ろうとするが…。
まぁそれなりのピクサー映画だと思います。
しっかり心温まるシーンやユーモアもありますし、最後にはほろっとさせる感動描写もあります。
ただね、このブログを読むような映画好きなあなたなら、今年の夏にピクサーの人たちがとんでもない化け物アニメーションを作ったのをもちろん覚えてますよね?そう、世紀の大傑作『インサイド・ヘッド』ですよ!
そこと同じスタジオが作ったとは到底思えないようなストーリーの詰めの甘さ、そして薄っぺらさ…。
まず初めに、主人公のアーロが序盤グズすぎてまったく共感できないのがいたい…。
アンダードッグとグズは違う!
だってネタバレはしないですけど、全部このアーロのせいなんですもん。
また今の環境のおかげでいろいろ製作裏話が自然と耳に入ってくるのですが、それらを聞いていてちょっとなんでそういうアイディアを使おうと思ったのかが疑問。
一番僕が疑問を覚えた裏設定(というか目指された設定)が、アーロとスポットの関係を人間と犬のそれにしたかった、ということ…。
まぁ確かにアメリカ人にとってペットは血のつながりはなく生物学的な違いはあれども、立派な「家族」の一員として認識されてます。映画でも犬と子供は滅多に死なないですし。
ただそれって僕のようなアジア人の観客には理解されづらいと思うのです。
韓国人なんかは人を罵るのに犬を引き合いに出すぐらいですからね笑
そこが今までのピクサーらしくないところというか、『インサイド・ヘッド』なんかではわざわざ日本公開用にライリーの嫌いなものをアメリカ基準のブロッコリーから日本基準のピーマンに変更したのは有名な話ですね。
それほどユニバーサルに理解できる魅力的なストーリーに気を配っていたはずなのに、この作品はそういう配慮に欠けている。
それがこの作品を好きになれない僕なりの一番の理由。
ただ作り手に同情しなければいけないことがひとつあって、それはそもそもこの作品自体プロダクション中にかなりの問題を抱えていたこと。監督が途中で変わったことが一番分かりやすい例かもしれない。
それぐらい作品への愛が作り手にもなかったし、それが観ている我々観客にもばっちり感じられるほど明らかなのだ。
褒められる部分は、この作品はピクサーとしても技術的にはかなりの挑戦作品であったこと。それぐらい作り手の挑戦が感じられる出来なのだ。
とりわけ、この作品のとんでもなくフォトリアリスティックなバックグラウンドは賞賛に価するだろう。
はっきり言ってこんなによく出来たバックグラウンドは実写作品でも見たことがないかもしれない。とりわけ河などの水の描写は実写のプレートを使っていると錯覚したほどだ。
チャンスがあって公開前にアニメーションスーパーバイザーのマイク・ベントゥリーニ氏のパネル・ディスカッションを聞くことが出来たのだが、この人もバックグラウンドの素晴らしさを押していた。アニメーションスーパーバイザーなのに笑
とりわけ雲は実際にボリューメトリックレンダリングを使用し、実際に質量のあるオブジェクトとして光の透過や屈折などがシュミレートされているそうだ。 (ちなみに通常はマット・ペインティングが使用されアーティストの手によって2Dとして描かれることが多い。その方が作業効率が早いし、レンダリング時間もおそらく天と地の差が出るだろう。)
まぁマニアックじゃない部分で良かったところをあげるとすれば、前半のアパトサウルスの一家が農作業をしてるところぐらいですかね。そこはかなりほっこりしました笑
ていうかそのまま何も起きずほっこり映画で終わっても良かったんじゃないかと思います笑
まとめると美しい映像や素晴らしいアニメーションは一見の価値ありで、普通に楽しめる作品だと思います。
ただ今年の『インサイド・アウト』のような大人でも楽しめる上質なストーリーを期待していくと、かなりがっかりするものだと言えるでしょう。まぁ1回観たらもういいって感じです。
トレーラー
IMDb 7.4/10
Rotten Tomatoes 76%
日本公開:2016/03/21
0 件のコメント:
コメントを投稿