2015/12/31

"The Danish Girl" 『リリーのすべて』

監督:トム・フーパー
出演:エディ・レッドメイン、アリシア・ヴィカンダー、ベン・ウィショー
撮影:ダニー・コーエン
音楽:アレクサンドル、デスプラ
120分

面白いけど、もう一歩かなぁ。。。!

デンマークで画家として暮らすヴェゲネル夫妻。夫のエイナルの描く風景画が評判を呼ぶ中、妻のゲルダの描く人物画はまったく見向きもされなかった。
そんなある日、ゲルダはエイナルに女装してモデルになるよう依頼、エイナルも快く引き受け、作品は高評価を受ける。しかしこれをきっかけにエイナルは自身のうちに秘めた"女性"の存在に気づいてしまう…。


まず何がなんでも最初に言いたい!ダニー・コーエンの撮影!素晴らしいです!
19世紀のデンマーク絵画(とりわけヴィルヘルム・ハンマースホイの作品)をモデルにしたであろう構図と光と影のバランスがとてつもなく素晴らしく、この美しい撮影だけでこれまで数多く作られたアーティストを描いたバイオグラフィー映画とは一線を画すことに成功しています。
(余談ですが、このヴィルヘルム・ハンマースホイも自身の妻イーダをモデルに数多くの作品を残したことで有名で、この作品のモチーフと当てはまることはなおさらポイント高し。)

それにしても、これが『レ・ミゼラブル』で構図などまったく無視の手持ち広角、マイクを映さないためだけの顔面ドアップをやってのけた無能監督トム・フーパーの作品とは思えないほど、今作ではかなり熟練した絵作りが楽しめ、この監督のことを少しですが見直しました笑

ちなみにこのトム・フーパーは僕的にはかなり嫌いな監督で、これもエディ・レッドメインとデンマーク絵画の影響がトレーラーで見えてなければおそらく観に行っていなかったでしょう…。

この映画の最大の見どころはやはり主演のエディ・レッドメインとアリシア・ヴィキャンデルの2人。
エディ・レッドメイン、さすがです。完璧に女性の所作をマスターしていてびっくりしました。彼が女装した際にはにかむ笑顔を観てキュンとしてしまった自分がいたのにはびっくりです笑

そしてアリシア・ヴィキャンデルもいい!ちょっとなんでそこまでリリーに尽くすのか、キャラクター的に理解不能なところがありましたが、それ以外は安定のパフォーマンスです。若手女優の筆頭株はもう間違いなくこの人で決まりでしょう。
『エクス・マキナ(原題)』の時も思いましたが、この人美人だけど意外と印象に残らない顔立ちをしているな、と。これもまたいろいろな映画で活躍できる要素だと思います。

さてここまでいいところばかり書いてますが、この作品決して良作ではありません。

まず編集がまずい。というかショットのコンティニュイティがとても悪い。これは編集マンの仕事がどうのというよりは、最初に述べた、ある意味独特な構図の弊害なんですが、1つ1つのショットはキレイでもシーンとしての流れを考えるとかなりいびつな印象を受けます。
そしてこれのもう一つの原因が、トム・フーパーはフォーカルポイントをやたら画面の隅に置く癖があることです。例えば、AとBの会話シーンがあったとして、画面左隅に配置されたAの切り返しに右隅に配置されたBのショットが続いたりします。そうなると我々の目はスクリーンを横断しないといけませんよね。こういうシーンが続くと観ていて非常に疲れるので、かなり物語の邪魔になるわけです。

そしてもう一つ良くない点が、作品のテーマを絞れていないことです。
勇気を持って一歩を踏み出すことの大切さとか、大きな決断をともに乗り越えようとする夫婦愛なのか、それとも夢を追い続けることの大切さなのか…。

結局、表面的なところ(美しい撮影や俳優たちのパフォーマンス)の素晴らしさは間違いないのですが、映画のもっと大事な、エモーショナルな部分への作り込みが足りないため、最終的に物語に入り込むことなく、映画は終わりました。

このもう一歩詰めきれてない感じがとても惜しいのですが、まぁトム・フーパーにしては頑張ったほうだし、次回作に期待するとします…笑

トレーラー

IMDb              5.5/10
Rotten Tomatoes             72 %

日本公開:2016/03/18

0 件のコメント:

コメントを投稿