2015/11/21

"Spectre" 『007 スペクター』

監督:サム・メンデス
出演:ダニエル・クレイグ、レア・セドゥ、クリストフ・ヴァルツ
撮影:ホイテ・ヴァン・ホイテマ
音楽:トーマス・ニューマン
148分

よくも悪くも凡作かな…。

Mの死後、残されたメッセージを頼りに謎の組織スペクターへとたどり着いたボンド。果たしてこの組織の目的とは…。


なんというか、前作『スカイフォール』でもちらちら見えてましたが、監督のサム・メンデス、かなり懐古主義的な面があるのと、ボンド(007シリーズ)への思いが強いこともあってか、ダニエル・クレイグ前のシリーズのイメージに少しづつ近づけてきている気がします。

そしてそれが今回強く出すぎて、だんだんあのアクション活劇のジェームズ・ボンドが戻ったような感覚を本作を観ている間感じました。

それが顕著に表れているのが脚本。
とてつもなく薄っぺらく、これまでストーリーの軸となっていたボンドの人間的な葛藤などが今作ではほぼ皆無です。
『カジノ・ロワイヤル』から始まったダニエル・クレイグ・ボンドの物語はそこをベースに展開されているので、こちらとしてはそれを期待してしまいましたが、どうやら製作陣が目指したものはそこではなかったようです。


後半の展開なんかもディテールはだいぶ無視されているし、それでいいのか?って感じ。

ただスタッフは超一流が集まっているので画的には間違いなく楽しめます。
とりわけ、撮影監督が『Her』や『インターステラー』を手がけたホイテ・ヴァン・ホイテマだけあって映画の雰囲気がかっちり出来上がっています。
前作のロジャー・ディーキンスは1ショットごとの構図の完成度がかなり高く、またシーン単位でのショットのビルドアップが凄まじく巧いので、あれだけ素晴らしいヴィジュアルを提供していました(とりわけあの高層ビルのシーンは圧巻)が、今回のホイテ・ヴァン・ホイテマは構図うんぬんというよりは映画の雰囲気を作り上げるのが巧いDPだと思います。

メイキングを見る限り、おそらくメインでフィルムを使用しているので、深い階調と独特の色合いもまたこのリッチな画作りに一役買っています。

どちらが正解というわけではなく、今回も他の007シリーズとは違ったルックを築くのに成功していて、自分的にはかなり好印象でした。
冒頭の長回しも素晴らしかった…!

そしてアクションで注目はスーパーカー同士のローマでのカーチェイスですかね。
カーチェイスの魅力に取り憑かれた身から見てもこのシークエンスはかなり極上のものでした。
シルバーのアストンマーティンとオレンジのジャガーが夜のローマを優雅に、そして颯爽と駆ける様にはうっとりしてしまいました笑
劇場ではトーマス・ニューマンのスコアが流れていたのに、僕の頭の中ではクラシックが流れていました笑
まるでフィギュアスケートを見ているときのような恍惚感…。いやぁ美しいシークエンスやった…。

しかしそれ以外のアクションシークエンスはあくまで凡庸。
『スカイフォール』の時も感じたけど、いまいちサム・メンデスの描くアクションを褒める気にはならない。ちなみに先ほどから否定的なことばかり書いてますが、サム・メンデスの映画は僕かなり好きです。


まぁまとめると、『カジノ・ロワイヤル』ほどスッゲーと驚愕するわけでもなく、『スカイフォール』ほど見てる間の驚きがあるわけでもないです。しかしエンターテインメントとしては非常によく出来ています。
B級の脚本(ドラマ的にね)を超一流のスタッフ・キャストでお金をかけて画面をじっくり作りこんだらこうなります、って感じの作品です。
いろいろ記憶に残る場面も多いので、作り手の熱意はひしひしと伝わりました。

それにしても、これがダニエル・クレイグのボンドの最期だと思うとちょっと残念です。
もう一本サム・メンデス以外の監督で作って欲しいなぁというのが正直なところかな。


トレーラー

IMDb          7.2/10
Rotten Tomatoes      63%

日本公開:2015/12/04

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