監督:ロバート・ゼメキス
出演:ジョゼフ・ゴードン・レヴィット、ベン・キングスレー、シャーロット・ル・ボン
撮影:ダリウス・ウォルスキー
音楽:アラン・シルヴェストリ
123分
佳作、だけど物足りない!
道化師フィリップ・プティはワールド・トレード・センターの2つのタワーの間にワイヤーを掛け、そこを命綱なしで渡ることを夢見て、仲間たちと入念な計画を立てていく。果たして彼のチャレンジは成功するのか…。
ーーー以下ネタバレーーー
葛藤がないのですごく物足りない。
作品の構成がなぜかプティ自身の回想という形を取っていますが、これがまったく効果的でない。そして映画冒頭で話が突然プティの少年時代まで遡ります。(ちょっと戻り過ぎでしょう!)
しかしそこはロバート・ゼメキスの旦那、ストーリーのテンポがすごくいいです。
トントン拍子でなぜプティが綱渡りをやるようになったか、 どういう経緯でWTCに興味を抱いたのか、などがスピーディに語られていきます。
しかし残念ながらこれらから受ける印象は、事実の羅列。
我々観客が見たい、というか少なくとも僕が期待していたことは「なにがそこまで彼を駆り立てたのか」という描写。
映画なんだからもっとファンタジックに、そしてドラマティックになってもいいと思うんですが、あくまで地に足ついた語り口(綱渡りの映画なのに!)で進んでいきます。
最大の見せ場の綱渡りシーンはビジュアル的に素晴らしい出来です。このシーンの間、お腹の下の方が何度スッとしたことか…笑
しかし…クライマックスがこれって、分かってはいたけどちょっと地味すぎ笑
そもそもこのプティという人物の綱渡りの技量に不安を抱かせる演出がまるでないので、ハラハラドキドキ感はほぼないと言っていいです。
まぁ本人がご存命なのは周知の通りなのでね、おそらく監督の狙いはそこではないのでしょう。
では本作を通して何を描きたかったのか。ここからはあくまで自分の推測ですが、これはプティの自伝を基にした映画の体裁をとったWTCへのトリビュートなのです。映画のラストの台詞"Forever"や、ヒロインがプティに言う台詞"You gave them(towers) life"がそれを物語っています。
この狙いはある意味うまく効いていて、おそらく9・11をアメリカで体験した人などはとてつもなく感慨深いでしょう。しかし、これがワールドワイドでそのようにうまく機能するかというとちょっと疑問です。なぜなら他の国の人々はそこまでWTCに愛着などないからです。(もちろんテロの事実は忘れ去られたとか、そういう話ではなくWTC自体への愛着の話です。)
これがこの作品の欠点というか、それを「プティの綱渡り」という本来ならメインのストリーでカバーしようとしているのですが、カバーするほどのドラマやアクションが見当たらないので、自分的にはこの狙いは失敗かなと思います。
さてけっこう厳しめに書きましたが、出来自体はまったくダメでも酷くもありません。
かなり楽しめてテンポもいいので、123分あっという間です。
全編通して軽いノリというか、観終わったあと心に響くものがあまりないのが自分的には減点ポイントですが、よく出来ていて楽しめる映画なのは間違いないです!
なによりIMAX3Dの迫力はすごいので、ぜひ劇場で!
トレーラー
IMDb 8.3/10
Rotten Tomatoes 87%
日本公開:2016/01/23
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