2015/09/22

"The Babadook" 『ババドック 〜暗闇の魔物〜』

監督:ジェニファー・ケント
出演:エシー・デイビス、ノア・ワイズマン、ヘイリー・マケルヒニー
撮影:ラデック・ラドチュック
音楽:ジェド・カーゼル
94分

超超超大傑作!!!!

アメリアは悲しい過去を胸に秘め、一人息子サミュエルとともに慎ましく暮らしていた。しかしそんな息子は普通の子とかなり変わっており、学校でも問題ばかり起こして彼女を困らせていた。そんなある日、アメリアは息子を寝かしつけるため「ミスター・ババドック」という見慣れない絵本を読み聞かせる。しかしその内容は尋常ではなく、彼女はすぐに読むのをやめてしまう。しかしその日から彼女とサミュエルの周りで不可思議な現象が起こり始め、しだいに彼女の精神はミスター・ババドックに蝕まれていく…。


僕はホラーを普段まったく観ませんが、断言できます、そしてもう一度言います。
これは超大傑作です。
ここ数年の間で生まれた数あるホラー映画の中でも突出してよく出来ています。
そして、こんなに映画で怖いと思ったのは『レクイエム・フォー・ドリーム』を観た時以来…。本当に恐ろしい映画体験でした…。

さてこの映画が成功したポイントとして3つの点を挙げておきます。もっといっぱい素晴らしい点があるのですが、枚挙にいとまがないので…。

撮影
これはもう見事としか言いようがありません。
かつてのスピルバーグは「見せない」美学を貫いて、他と一線を画すことに成功しました。例えば、『激突!』なんかでも結局トレーラーのドライバーの姿を我々は見ることがありません。そして『JAWS』を作る際にも極力サメの姿を見せないようにしています。
そしてこの『ババドック』も原理はほぼ同じ。しかしこの巧さが半端ではありません。
これを勘違いしてバカみたいに乱用してるギャレス・エドワーズに見倣ってほしいぐらいです。
というわけで、この怪物ババドゥックの全容を我々が見ることはありません。それがもうすごく恐怖(というか想像力)を駆り立てます。
2次元で表現されてるものの方が(ババドゥックは劇中の絵本のキャラクターなので)、3次元ではっきり見せられるよりはるかに現実味があるし、いくらでも頭のなかで描写できるので、もう怖いのなんのって…。

というわけでここで大事になるのが、どうババドゥックを画面上で表現するかですが、これはもう素晴らしいライティングとカメラワークによって効果的に描写することに成功しています。
基本的に暗い家が舞台になるのですが、影が単なる影ではなく、「闇」として機能しているのがポイント。まるで家の影があるところにババドゥックが潜んでいるかのよう。まったく気が抜けません。全編にわたってすさまじい緊張感を生み出すのに一役買っています。


ジャンプスケア
さて、誰も興味ないかもしれませんが自分の話を少々。僕がホラー映画を観ない理由を説明しましょう。
怖い幽霊/化け物が夢に出てきて夜眠れなくなるから。ハラハラドキドキするのが嫌いだから。人が死ぬのを見たくないから。
どれも不正解です。理由はたった一つ「ジャンプスケア」です。
ちなみにジャンプスケアとは、観客が「お尻を浮かすぐらいビックリする」ところからきてるとかきてないとか。突然どこからか物音がしてBGMがなくなってゆ〜〜っくり物音のする方へ登場人物が歩み寄っていったら、十中八九これです。たとえモンスターとかが出てこなくても、引っ掛けで使われます(もう今となっては引っ掛けでもなんでもないですが…)。
昨今のホラーで必ず目にする定番中の定番の演出技法ですが、僕はこれが大大大大大大大嫌いなのです。

というよりこれはホラー以外にも当てはまりますが、これがあるだけでどんなにその作品が素晴しかろうと、もう僕のお気に入り映画のリストからは除外されます。
というわけで『ダークナイト』なんかもあのたった1シーンのせいで僕的には興ざめしてしまうのです。

さて話を戻すとこの映画、驚くべきことにこのジャンプスケアが一度たりとも使われていないのです!ジャンプスケアなしでもこんなに怖い映画が作れるんだ、とアンチジャンプスケアの自分的にはもう拍手喝采ものでした。ホラー映画はこうあるべきです。マジで。

ストーリー
はっきり言いましょう。最初の30分はかなり退屈です。ていうかだいぶイライラします。
というのもこの30分はサミュエルっていうガキんちょがウザいのなんのって…。ちょっと一瞬これはマズイぞ…と思いました。しかし安心してください。この感情もこの映画体験の一部なのです。
ストーリーが進むにつれてサミュエルと母親のアメリアの立場が、まるでマジックでも見てるかのように見事にスイッチします。
そしてそれが後半へのキーとなり、我々観客の感情を激しく揺さぶるポイントとなるのです。ぜひババドゥックが出てくるまでは観るのを止めないでください。それ以降は極上のホラー体験があなたを待っています。

トレーラー

IMDb        6.9/10
Rotten Tomatoes     98%

日本公開:未公開
DVD発売済み


『ババドック 〜暗闇の魔物〜』
もうすでにDVD発売済みというわけでどうぞ。ハロウィーンにもおすすめですね。


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