監督:バルタザール・コウマウクル
出演:ジェイソン・クラーク、ジョシュ・ブローリン、ジェイク・ギレンホール
撮影:サルヴァトーレ・トチノ
音楽:ダリオ・マリアネッリ
121分
思ってた以上に面白いです、この映画。
エベレストのガイド、ロブは年に一度頂上まで登るツアーを主催している。
そこに集まったのは個性溢れる、しかしどこにでもいる普通の人々。
そんな彼ら一行は順調に頂上まで登りつめていく。しかし同時に大きな嵐が彼らの元に近づいていた…。
なんというか、思ってた以上にアクションに逃げてなくて良かったです。
というのもドラマが盛り上がるのが大体前半1時間が終わってから。それまではひたすらエベレストを登って行くわけですが、ここのディテールの描写が秀逸。
別に映画だからといって必ずしも人が死んだり、グループで衝突したりする必要はなく、みんな仲睦まじく登っていく。ただ、思い出して欲しい。舞台はエベレストだということを。
実際に登ったことがないので分かりませんが、例えば同じ時期に登っている別のグループ(そしてよく会うから顔馴染みになっている)と交流があったり、情報を交換したりするそのコミュニティの描き方にすごく好感が持てました。
まったく見ず知らずの世界を垣間見た感じです。
たかだか山にこれだけのプロフェッショナル達が情報のネットを張って万全の体制で臨む、その描写がエベレストという山の神々しさを強調しています。
そして後半。頂上付近から頂上まで登りきった時の感動はものすごいです。
特にグループに紅一点として日本人女性がいるのですが、その彼女が頂上に日本国旗を置いたところに、なぜだかものすごく感動してしまいました。(まだ自分の中に日本人としての誇りが残っているのか…笑)
そしてこれがこの映画の一番大事なポイントですが、本物の雪山で撮影しているからか臨場感と達成感を感じられます(さすがに頂上はグリーンバックでしたが笑)。
CGを勉強している人間がこんなこと言ったら怒られそうですが、やっぱり本物の迫力はすごい笑
そして頂上まで登りきった後。ここらが本番。
人間の身体はその環境に耐え切れず、人がバッタバッタと力尽きていき、それを助けようとする人までもが容赦なく山の餌食となっていきます。そしてさらに悪いことに大きな嵐までもが彼らを襲います。
そこで彼らの生死を分けたのは一体何だったのか…。運命というものが存在するのか…なんてことを考えているとなかなか感慨深いです。
実話を基にしているので、あんまりめったなことは書けませんが、映画的な話をすると、この自然の猛威に為す術なく飲み込まれていく様がすごくスリリングに描かれていて、ここの描写は今年1、2位を争うほどの手に汗握るシーンになっています。
後半1時間はハラハラしっぱなしだったな…。
ただこの映画には致命的な失敗が1つあって、それが役者が誰が誰だか分からなくなる、ということです。
特に後半。編集のせいかもしれませんが、グループが散り散りになってしまってからはもう一部のグループを除いて、場所の関係性がまったくと言っていいほど分からないです。
そして衣装もみんな厚着して酸素マスクをつけ、もっと悪いのがフードまでかぶってる。これ、実は全員スタントの人たちでしたと言われてもまったく驚きではありません笑
せっかく素晴らしい役者陣を揃えたんだから、ここの描写をもう少し工夫していればもっといい作品に仕上がったはず。
さてこの映画の一番の目玉はとにかく素晴らしい役者陣でしょう。
ジェイソン・クラーク、ジョシュ・ブローリン、そしてジェイク・ギレンホール。この人たちはいつも通りに素晴らしい演技を魅せてくれます。ジェイク・ギレンホールとか主演だった"Southpaw"の時よりこっちの方がいいキャラでしたね笑
そんな彼らに加えて、ジョン・ホークス、マイケル・ケリー、そしてサム・ワーシントンなど芸達者な俳優揃い。
女優陣もエミリー・ワトソンをはじめとしてキーラ・ナイトレー、ロビン・ライトなどこれまた通好みな女優がずらり。
実はこれアメリカでは批評家受けがあまり良くなく、興行的にもパッとしなかったのですが、そんなこと関係なしに自分はすごく楽しめました。
何よりエベレスト(そしておそらくどっかの雪山)で撮影した本物の映像の迫力がすごいので、これはぜひ劇場で観ることをお勧めします。
そして山なんて登ったことのない、インドア派な僕のような人間にも、意外と最初の1時間に興味深い描写が盛りだくさんで楽しむことができます。
これはぜひおすすめの作品です!
トレーラー
IMDb 7.4/10
Rotten Tomatoes 72%
日本公開:2015/11/06
『2ガンズ』
監督バルタザール・コウマウクルの前作。全然面白くないけど、予習としてどうぞ。
『猿の惑星:新世紀(ライジング)』
ジェイソン・クラークはだんだんとハリウッドでの立ち位置を獲得してきましたね。
『シンデレラマン』
本作の美しい撮影を手がけたDPサルヴァトーレ・トチノといえばこれ
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