2016/08/29

"Kubo and the Two Strings" 『クボ・アンド・ザ・トゥー・ストリングス(原題)』

監督:トラヴィス・ナイト
出演:アート・パーキンソン、シャーリーズ・セロン、マシュー・マコノヒー
撮影:フランク・パッシンガム
音楽:ダリオ・マリアネッリ
101分

なかなか楽しめました!

母親と人里離れた場所で暮らす少年クボは彼のことを狙う彼の祖父と叔母姉妹の目から逃れて生きていた。あるお盆の日、ひょんなことから彼らに居場所を知られてしまったクボは間一髪危機を逃れるも、これを機に彼らを倒すための3つの武具を見つける旅に出ることに。そしてクボの冒険が始まるのだが…。



さすがライカです。大手のスタジオはほぼ手を引いたストップモーションアニメーション(他にはイギリスのアードマンぐらい?)という技法を用いて、これほどまでにキャラクターの内面描写やアクションを描けるのかと終始驚きっぱなしでした。

ちなみに言っておきますと、僕はライカの作品が映画的に良いとは思っていません。
彼らの作品に対するこだわりやクラフトマンシップは世界一のレベルと言って間違いないですが、ストーリーがもうひと踏ん張りであることが多いです。
ところがこれは非常に良くできた作品だと言っていいでしょう。ただもちろん問題も多々ありましたが…。

まず手放しで褒められるのがアニメーション。これはもうとんでもなくすごいです。

知らない方のために説明すると、ストップモーションとは1フレームずつパペットを動かして1枚写真を撮ったらまた次のフレームの位置にパペットを動かしてまた撮影するという、このCGI全盛の時代には考えられないほどアナログかつ超非効率的な技法です。

またその性質から'Follow Through'(一連のアニメーションを1から10の順番通りに撮影していく方法。)というアニメーション技法しか使えず、ジュニアレベルの人たちがアシストできることはアニメーションの段階ではほぼないと言っていいでしょう。
それぐらいたった一人のアニメーターの腕にその出来がかかっているわけです。

また撮ってしまったあとで微調整する方法がほぼ無いに等しいため、完璧にぶっつけ本番です。というわけでとんでもない集中力と責任をアニメーターたちは背負っています。

そんな何一つ効率的ではない超ドMな技法で未だに作品を作り続けているのがこのライカであり、そのアニメーションのレベルはやはり素晴らしいです。
正直、この技法を見るためだけでもこの映画、観る価値はありだなと。


こんな絶滅寸前の方法を使っているからなのか、メイキングがかなりたくさん公開されていました。まったく、すごい労力です。









また今回思った以上に良かったのがカラースキーム
これまでのライカの作品は『コラライン』や『パラノーマン』そして『ボックストロールズ』など基本的にダーク。暗いか青を基調とした画面が多かったんですが、今回は暖色系も非常に多く、かつ効果的に使われていたので見ていて非常に気持ちが良かったです。

ただやはりストーリーに関してはやや難あり。

メインストーリーはある強大な敵を倒すためにクボ一行が3つの武具を見つけに行くという話なんですが、正直そのヒントの見つけ方もテキトーというか、まるでどっかから湧いて出てきたかのように都合よくクボたちの前に現れます。

またもちろんセットアップの違いなんかはあるんですが、 結局は同じことを繰り返しているだけなので正直飽きます。
これなら剣と盾とかキーとなる道具を2つだけにして、一つ一つの難易度をもっと上げてくれた方が見ごたえ的にはあったかと思います。結局あれらの道具はテーマ的には大事じゃないんですから。


また声優陣もこれまでのライカ作品とは打って変わってかなり豪華。
主人公のクボの声は『ゲーム・オブ・スローンズ』でおなじみのアート・パーキンソンが、声変わりするかしないかぐらいの声で演じています。

そして旅のお供となるモンキーにはシャーリーズ・セロン。去年の『マッド・マックス 怒りのデス・ロード』のフュリオサといい、最近こういう中性的な強いキャラクターを演じることが多いですね。かなりハマってるんで、いいですが!

そしてもう一人ビートルを演じたマシュー・マコノヒーもかなりコミカルかつ彼自身も楽しんで演じていたのが伝わってきましたね。今回西部のアクセントがなくて本当に助かった…笑

他にも悪役としてレイフ・ファインズやルーニー・マーラなども参加。正直この2人はクレジット見るまで気づかなかった…笑


まとめると、まず楽しめることは間違いないです。
大人も子供もワクワクもしますし、この作品で描かれているモティーフなんかはかなり大人向けというか、『ズートピア』や『インサイド・ヘッド』で描かれていたような大人にしか分からないような比喩が結構あったりします。それでいながら子供も満足できるアクションとアドベンチャーが盛りだくさんでエンターテインメントとしての質は間違いなく高いです。
ただやっぱり今一歩踏み込みきれていないというか、質の高いアニメーションであることは間違いないんですが、映画としてはまだ未熟かなと思います。ストップモーションは難しいなぁ。

ただストップモーションアニメーションのファンであれば、すぐさま観に行くことをお勧めします。

トレーラー

IMDb            8.4/10
Rotten Tomatoes        96%
metacritic          83/100

日本公開:未定

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