監督:クリント・イーストウッド
出演:トム・ハンクス、アーロン・エッカート、ローラ・リネイ
撮影:トム・スターン
音楽:クリスチャン・ジェイコブ、ティアニー・サットン・バンド
96分
さすがクリント・イーストウッド御大!
バードストライクに遭い、両エンジンを失いながらもハドソン川に緊急着陸し乗客乗員155名全員が無事という「奇跡」を起こしたサレンバーガー機長。世間は彼を英雄視するが事故の責任問題を調査する国家運輸安全委員会は事故機が離陸した空港に帰れる可能性があったとして、サレンバーガー機長に疑いの眼差しを向け始める…。
素晴らしいです。
イーストウッドの監督としての腕はかつては認めていませんでしたが、最近はもうすっかり虜に。そして本作もそう。
相変わらず俳優をしっかり活かしたキャラクターが出来上がっており、また押さえ気味の演出もこういうテイストの映画にはしっかりとハマっていて、見応え十分でした。
ただこの作品、ちょっとこれまでのとは少しだけテイストが変わっています。
まず上映時間が短い。
おそらく彼のフィルモグラフィーの中で一番短いんじゃないだろうか。
イーストウッドの監督作品は基本的に130分あたりが多く、中だるみすることもしばしば。ただ本作は96分ということもあってまったくそんなことはありませんでした。
そしてカラー。
新作が出るたびに色が抜け落ちていっている感じがしたイーストウッド作品ですが、 なんと本作では少し色が戻っている!
あまりに灰色、青色の寒色系が多かったのがちょっと僕的には難点だったんですが、この方針転換は嬉しい限りです。
そしてほぼ全編IMAXカメラで撮影されている。
ちなみにこれに関しては僕は通常の劇場で観たので、なんとも言えないです…すみません。
とまぁ御年86歳とは思えないチャレンジ精神には脱帽します。
さて映画自体の話に入りますが、まぁ周知のことかもしれませんが言わせてください。
トム・ハンクスが素晴らしいです。
どうしてここでこうしたら観客の心を動かせるというのがこの人には分かるんでしょう。
『キャプテン・フィリップス』のラストで見せたあの表情に匹敵するほどの、繊細な演技を本作でも披露。そして僕はそれに迂闊にもまた心動かされ、胸が熱くなったシーンが何度あったことか…。
とりわけ事故発生から乗客全員の生存を確認するまでの険しい表情と報告後のサレンバーガー機長の表情の違いを見てみてください。一体何が違うのか、正直言葉にするのは不可能なぐらいかなり微妙なニュアンスをこの人は見事に体現しています。ロケーションもどんどん変わってるし、おそらく時系列での撮影ではないのに、名人芸というのはこのことだなと。
また副機長役のアーロン・エッカートも素晴らしく、トム・ハンクスとの息もバッチリ合っているのが見えました。
この人そんなに個性のない俳優ではないのに、見事に主役を引き立てる「助演」の位置に徹していて見事なサポーティングアクトでした。
ただかなり問題だったのがストーリーの構成。基本的には事故後の様子が描かれているのですが、まぁフラッシュバックの多いこと。
しかも挿入の仕方が下手なのと上手く機能していないシーンもちらほら。
とりわけ最初の(かな?)フラッシュバックはサリーがティーンエイジャーだった頃に戻り父親とともに小さな飛行機に乗っているシーンがあるのですが、それが本作のストーリーに関係していたかというと、まぁしてないんですねこれが。
時系列をいじってストーリーに波を起こさせようとした試みなのでしょうが、ちょっと失敗だったと思います。回想はいたずらにやってはいけません。
またもう一つの問題が音楽。本作に限ったことではありませんがイーストウッド作品の音楽ってジャズというかデパートで流れてそうな特徴のない音楽が多く、ちょっとここをもう少し改めてくれたらなぁと思います。使い方も正直上手くない。
まとめると致命的な問題点といえばストーリーテリングの仕方についてぐらいしか思い浮かびません。全体的にしっかりとした作りでした。
ぜひとも観に行くことをお勧めします!
トレーラー
IMDb 8.0/10
Rotten Tomatoes 82%
metacritic 75/100
日本公開:2016/09/24
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