監督:ティム・ミラー
出演:ライアン・レイノルズ、ジーナ・カラーノ、エド・スクレイン
撮影:ケン・セン
音楽:ジャンキーXL (asトム・ホルケンバーグ)
108分
素晴らしいです!(というわけでちょっと長くなります笑)
裏稼業でちまちま稼ぐチンピラのウェイドはある日、運命の女性と出会い人生を共にすることを決意。しかし時を同じくして病魔が彼の体を蝕み彼は余命いくばくもないことを知らされる。愛する人を守るため、彼はバーで出会った謎の男に病気が治る研究をしていることを聞かされ、自ら人体実験に志願。そこで醜い容姿と引き換えに驚異的な回復能力を身につけたウェイドは自らをデッドプールと名乗り、この実験の責任者でありこの容姿を治すことができる唯一の人物とされる男エイジャックスを見つけ出すため、悪人を次々と倒していくのだが…。
最初に言いましょう。
この映画、本当にどうしようもなくくだらないです。
この映画、本当にバカでアホなんです。
しかしこの映画、めちゃくちゃ素晴らしいです!
これを作った人々はとてつもなく頭が良いです。
まぁこの話に関してはちょっとつまらない話になるので、先に見どころから。
まずデッドプールのキャラ!めっちゃいいです!
おそらくこれまでのマーベルのキャラで一番魅力的かつ人間的(能力は中学生の将来の夢みたいな、ずばり「死なない」という一番ぶっ飛んだやつだけど笑)。
どんな危機的状況でも常に軽口をたたき、しかも下ネタ、ブラックジョークのオンパレード。さらにはフィクションと現実世界の間にあるという「第4の壁」も平気で破ってきます笑
これらのやり取りの多くは、まだアメリカ文化を理解しきってない僕はそこで結構つまづきましたが、それでも面白いやりとりは多いです!しかもちゃんと笑える!
そして映画自体もそうだけどかなり暴力的。スーパーヒーロー映画で、しかもマーベルなのに血の量はまさしく出血大サービスで、さらに切株描写満載。
あまりに過激すぎて、中国では暴力や性描写を国が勝手にカットして上映することがあるそうですが、今作に関しては上映しないことに決めたそう。というのも暴力シーンがなくなると話が分からなくなる、というのが理由らしい笑
そんなデッドプールを演じたのが今作でプロデューサーも務めるライアン・レイノルズ。
この人、今まであんまりパッとしなかったというか、どの作品に出てても背が高くてマッチョな2枚目俳優(ちょっとクリス・エヴァンスとかぶるところがある)でしたが、今回はまさしく適役を見つけたという感じ!
飄々としたデッドプールの魅力を存分に発揮できていたと思います!
ただ実は彼がデッドプールを演じたのはこれが2回目。
最初の登場時(『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』というX-MENシリーズのスピンオフ作品)は目も当てられないほどひどかった。
映画自体もゴミみたいな映画だけど、とりわけ彼のキャラは取ってつけたよう。
見かけもダサいし、最悪なのが口がないところ。意味分からんし、コメディリリーフなデッドプールの口を塞ぐってこれまで聞いたアイディアの中で一番最悪かもしれない笑
そんなトホホなスクリーンデビューを飾ったデッドプールでしたが、それでもライアン・レイノルズは諦めませんでした。そしてこの映画を見事他に類を見ない超一級のエンターテインメント映画として完成させ、我々観客を楽しませてくれました。
この話自体いいじゃありませんか。
そして監督を務めたのが、本作で長編映画監督デビューのティム・ミラー。
これデビュー作ってマジですか?
素晴らしいセンスと明確なビジョンの持ち主です、この人。
ただいろいろ調べていくうちにちょっと納得しました。
というのもあのデイヴィッド・フィンチャーの『ドラゴン・タトゥーの女』の有名なオープニングシークエンスでクリエイティヴ・ディレクターを務めた人だったんです。
ちょっとうろ覚えだな…という方はこちら↓
このたった2分ほどのシークエンスに圧倒的ビジュアルセンスを感じたのは僕だけではないはず。今見直しても鳥肌が立ちますね…。
そして監督デビューとなった本作でも、すごいシーンとショットのオンパレード。
しかもそれぞれ質がものすごく高く、いちいちカッコいい!
今回もオープニングシークエンスからがっちり心を掴まれます。しかも笑わせてもくれます笑
最初の1ショットで、もうこの映画僕は好きになるなって云うのが分かりました。それぐらい素晴らしいです。
さてここからはちょっとつまらない、いかにこの作品のプロダクションバリューが高いかというお話。興味のある人だけどうぞ笑
まず驚いたのが、この作品のコンセプトからキャラ設定、そしてVFXまですべてがしっかり丁寧に作られていることです。
そんなの良い映画はみんなそうだと言えるかもしれませんが、この作品は話が違います。
なぜなら予算がマーベル映画史上最も最安じゃなかろうかという、たったの5800万ドル。
同じくフォックスが映画化権を所有しているX-MENは1作目で7500万ドル。最新作アポカリプスに至っては推定で2億4300万ドルとも言われています。
つまり新しいX-MENの予算で4本デッドプールが作れちゃうわけです。
予算がなければ時間もないわけで、そんな中よくまぁここまで話にしろ画面にしろしっかり作り込めたなという感じ。
そしてこの作品さらに、R指定!
先にも書きましたが、バイオレンス(しかも結構グロ系の)盛りだくさんだし、ジョークも下ネタかブラック。というわけでこの作品は問答無用で子供は観られない「R指定」となりました。
これ日本ではあまり問題になりませんが、アメリカではかなり興行収入に響くことで知られています。 というわけでスタジオ的には子供連れの家族をターゲットにした、最悪でも「PG-13」(13歳以下は保護者同伴)のレイティングを得ようとあらゆる手を尽くすわけです。最悪の場合、スタジオが勝手に手を加えてそのレイティングに収まるよう編集することもあるとか…。
そんな中、今作は完璧に大人にターゲットを絞ったR指定で勝負に出て見事に成功したのです。(興行はまだどうなるか分かりませんが、出来としては大成功!)
さて予算も十分とは言えず、公開後は家族連れの観客を見込めない。そんな不利な状況の中、作り手は見事にやりきりました。
その成功の理由はなんだったんでしょう…?
この映画、言い方は悪いですが「分を弁えている」映画なんです(いい意味でね)。
どこにお金を使うべきかきっちり分かっていて、重要ではないパート(会話シーンとか)ではかなりカメラアングルも押さえ気味にしています。(しかしそれでもきちんと観ていられるのはやっぱり脚本の出来がいいからなんですよね!)
そして重要なアクションシーン(高速道路のシーンとか)ではスローモーや質の高いCGIをふんだんに用いてド派手に魅せてくれます。
そう、昨今のスーパーヒーロー映画といえばCGのUIが出てくるSFちっくな秘密基地や世界を巻き込んだ大バトルシークエンスが必須かと思われがちですが、違います。僕らが期待するのはメリハリなんです!(すべての映画に共通しますが…。)
最近のスーパーヒーロー映画がどれも一緒に見えるのはそれがないからなんですよね。
しかしこのデッドプールはしっかりとしたバランス感覚を持ち合わせて、他のビッグバジェットのスーパーヒーロー映画と差別化を図ることに成功しているのです!
これぞ理想のプロダクション形態だと思いませんか?
さてまとめると、今作は決して背伸びせず、それでも魅せるところはきっちりと魅せてくれます。これがとてつもなく観ていて気持ちが良いというか、こんなにも痛快な気分になった映画はすごく久しぶりです。
これはぜひ劇場で!
繰り返しますが、高速道路のシーンとタイトルシークエンスのビジュアルのかっこよさ、そして面白さは十何年ぶりの興奮度でした!
そしてクレジット後にもお約束があるので、お見逃しなく笑
トレーラー
IMDb 8.8/10
Rotten Tomatoes 84%
metacritic 65/100
日本公開:2016/06/01
追記:
2016/03/02 - 邦題、日本公開日変更しました。
追記2:
2016/03/22 - 日本公開日変更しました。
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