監督:チャーリー・カウフマン、デューク・ジョンソン
出演:デイヴィッド・シューリス、ジェニファー・ジェイソン・リー、トム・ヌーナン
撮影:ジョー・パッサレッリ
音楽:カーター・バーウェル
90分
素晴らしい出来です!
出張でシンシナティへとやってきたマイケル。彼は他の人には到底理解できないであろうほど深い孤独感に悩まされていた。この孤独と不安の正体は一体何なのか…。
そんな小旅行の最中、マイケルはホテルで魅力的な女性リサと出会い、そのことが少しずつ彼の人生に変化をもたらしていくのだが…。
チャーリー・カウフマンといえば、奇抜な作品を作ることで有名ですね。
『ジョン・マルコビッチの穴』でこれまでにないオリジナリティ溢れるストーリーを生み出したかと思いきや、『ヒューマン・ネイチュア』や『アダプテーション』、そして『エターナル・サンシャイン』など作る作品全てが他の映画とは似ても似つかない独創性溢れるものばかりです。
そんなカウフマンが脚本だけでなく監督も務めたのが2008年の『脳内ニューヨーク』。それから7年後、ようやく劇場公開規模の監督第2作目が出来上がりました。
それがなんと誰が予想したか、ストップモーションアニメーション!!
しかしそれも蓋を開けてみれば、アニメーションならではの表現技法と映画の身体性がうまく合致した巧みな作品となっていました。
そもそもアニメーションでは画面に映るものは基本的には紙に描かれたものだったり、コンピューターで作られた3Dのモデルだったり、今作のように精巧に作られたパペットであったり、結局は人間は映っていません。そんな彼らに我々人間のような命を吹き込むのがアニメーションと声(声優)の役割ですよね。
今作ではその"声"がとてつもなく重要な役割を果たしています。
というのも主人公のマイケル(デイヴィッド・シューリス)は世界とのつながりを持てずに日々を生きており、その表現のひとつとして彼以外の人間(女性も!)の声がみんな一緒(もっと言うとトム・ヌーナンという抑揚のないおっさんの声)なのです。
そしてマイケルはついに魅力的な"声"を持つ女性リサ(ジェニファー・ジェイソン・リー)と出会い、彼のこれまでのつまらない人生を見つめ直すきっかけになります。
そうです、つまりこの作品の声優は主役のマイケルとリサ、そして他の人々(クレジットではEveryone elseとなっています)と、基本的にこの3パターンしか存在していません。
予算がないとかなら分かりますが、この規模の作品でそんな技法を使うアニメーション観たことありますか?笑
これをカウフマンは実際にやってのけ、そしてそれがきちんと"演出"として機能しているのがすごい!
たしかに実写でも出来なくはないですが、これをアニメーションでやることによってより「人間性」のあるものと「作り物」の区別が明確になり、この作品で伝えたかったことがとても明確になります。
ここはやはりカウフマン巧いなぁ、と改めてこの人の頭の良さに感心させられました。
作品のメッセージ性、というか言いたいこと表現したいことも実に明快。カウフマンは時折そこで小難しくしてしまって失敗するのですが、今回は大成功。
クラフトマンシップとアーティストの表現力が限りなくハイレベルでマッチした非常に稀な作品です!
ぜひとも多くの人に見てもらいたいですね。
この手の作品にどうこう言っても理屈っぽく聞こえるだけなので(え、もうそう聞こえるって?笑)、とにかくこれ以上はぜひ劇場で、その目で確かめてください!
それにしてもこれもクラウドファンディングで制作されたとは…恐るべし…。
トレーラー
IMDb 7.7/10
Rotten Tomatoes 97%
metacritic 92/100
日本公開:2016/06/03 DVD&Blu-rayリリース
追記:
2016/03/22 - 日本公開日変更しました。
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