2016/10/03

"Snowden" 『スノーデン』

監督:オリバー・ストーン
出演:ジョゼフ・ゴードン=レヴィット、シャイリーン・ウッドリー、リス・エヴァンス
撮影:アンソニー・ドッド・マントル
音楽:クレイグ・アームストロング、アダム・ピータース

もうちょっと面白くできたかな。

2013年、テロ攻撃防止のためNSAが全世界の通信情報を取得し、自由に個人情報にアクセスできる監視システムを実際に使用していたという衝撃の事実をマスコミにリークし、国を追われた男エドワード・スノーデン。愛国心溢れるスノーデンが軍隊、CIA、NSAを経てなぜ国を裏切るような行動に出たのか…。


かなり手堅い作りでした。

アメリカ全土を揺るがせた一大スキャンダルの一部始終を当事者の視点からしっかりと描いており、何がいつ起こったのかがかなり分かりやすく描写されています。というわけで、この事件のことを聞いたことはあっても詳細を知らないという人にはうってつけの作品でしょう。

まず簡単に技術的な話をしますが、撮影がやはり素晴らしかったです。現役のDPで最もユニークな構図の知識とカメラワークの技術を持ち合わせているカメラマン、アンソニー・ドッド・マントルが手がけただけあって相変わらず画面だけでも十分楽しめます。
マクロレンズの使い方や、思わぬところにカメラを置く大胆さは健在で、僕的にはこの人のカメラを見られるだけでも満足だったりします笑

そして俳優陣も皆上手くはまっており、スノーデンを演じたジョゼフ・ゴードン=レヴィットは時折スノーデン本人に見えたぐらい入り込んでいました。
スノーデンの彼女役を演じたシャイリーン・ウッドリーも奔放な性格の女性をナチュラルに体現。またJGLとの相性もバッチリでした。

そしてCIAのお偉いさん役のリス・エヴァンスやちょい役で出演のニコラス・ケイジなどなど。皆上手くこの映画に馴染んでいました。配役に関してはかなり上手くいっていたと言えるでしょう。

さて、このスノーデンという人がとった行動はかなり物議をかもすものですし、人によっては反逆者、そして人によってはアメリカの「自由」を守った勇敢な行動をとった英雄として見る人もいるでしょう。

そんな人物をハリウッドでも1、2位を争うほど政治に関して声高な映画監督オリバー・ストーンが映画化しただけあって、やはり政治色は強いです。
そしてもちろんこの人なりの解釈で映画化しているので、かなり主観的というかちょっと押しつけがましい部分もあったのは事実です。

とまぁ正直僕はそんなこの作品や僕の政治的立ち位置がどうのという話はここでするつもりはなくて、映画的にどうだったかをこのブログでは書きたいのです。ところが正直その部分に突っ込めるほどの要素がこの映画には含まれてなく、そこがおそらくこの作品でいちばんダメな部分。

なぜスノーデンがそういう行動に出たのか、という我々が最も気にする部分がまったく描けておらず、結局はこういう出来事があったというイベント、事実の羅列に終わっていたのがかなり残念でした。

正直それなら去年公開されたドキュメンタリー"Citizen Four"を観た方がよく、劇映画としての脚色というかドラマチックな展開がちょっと足りなかったですね。

ただなぜこうなってしまったのか、その理由は映画のラストで分かります。

ーーーーーーーーーというわけで以下ネタバレですーーーーーーーーーー






































ラストにスノーデンの公演が開かれるのですが、なんとそこに現れたのがエドワード・スノーデンご本人。
そしてなぜこういう行動に出たのかを本人の口から説明するのですが、ん〜。まぁこのシーン自体は別にどうこう言うつもりはありません。僕的にはそこまで気になりませんでした。
ただ本人が出るということは本人の協力があってこの作品が出来たということで、そりゃあまぁ自分の悪いこととかは描かせないですよね。というわけでこう言う理由でこんなにもコントラバーシャルな人物の伝記を丸く作ってしまったのか、とがっくりきました。

まぁ実際にいる人物だけど、映画にするならもっと裏の顔とか汚い部分も見たかったですし、というわけで映画のキャラクターとしての「エドワード・スノーデン」の魅力はほぼないに等しかったですね。











































ーーーーーーーーーーーネタバレ終了ーーーーーーーーーーーー

バイオグラフィー映画は難しいですね。そういう意味で存命の人物を描きながら素晴らしい傑作になった『ストレイト・アウタ・コンプトン』とか『博士と彼女のセオリー』なんかは本当に素晴らしかったと思います。

まとめると悪くはないですが、もっと良くできたと思います。
俳優陣の力強いパフォーマンスとかっこいいカメラワークと音楽。技術的にエンターテインする部分はしっかりしているのですが、いかんせんストーリーとキャラクターのデヴェロプメントが弱すぎて、物語とキャラクターに入り込むまでにはいきませんでしたね。
この事件のことに興味がある人なら楽しめると思います。

トレーラー

IMDb         7.4/10
Rotten Tomatoes     63%
metacritic       58/100

日本公開:2017/01/27

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