2016/02/15

"The Revenant" 『レヴェナント:蘇りし者』

監督:アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ
出演:レオナルド・ディカプリオ、トム・ハーディ、ドーナル・グリーソン
撮影:エマニュエル・ルベツキ
音楽:ブライス・デスナー、カーステン・ニコライ、坂本龍一
156分

撮影は素晴らしいが、何ともつかみどころのない普通の映画だった。

探検家のグラスはある日熊に襲われ、体の自由が効かなくなったがために仲間に置き去りにされる。その間彼の面倒を見るとして残ったうちの一人が同行していた彼の息子を殺害、グラス自身も彼の手によって生き埋めにされる。
復讐心のみで死の淵から蘇ったグラスは息子を殺した男のもとへ歩を歩み始めるのだが…。


さて今年の賞レースでたびたび話題になり、今年のオスカーでも本命の呼び声高い本作。
公開前からだいぶ話題になってましたね。ディカプリオが相当身体を張ってる、と。
画面からも彼の気合の入り方が違うことがかなり感じられました。
熊に襲われるシーンから、真冬の川を泳ぐシーン、生魚やバッファローの肝に食らいつくシーンなどなど。
でもね、演技ってそういうことじゃないと思うんです。

ここまでされるとなんだか見てるこちらとしては、テレビで熱湯風呂に入るお笑い芸人さんたちともはや大差ないんじゃないかと感じちゃうんですよね。(まぁアメリカにその手の笑いがあるのかは知りませんが…。)

俳優の演技が光る時って、もっとこう…キャラクターの心情が、画面には見えないもっと奥深くにあるものが垣間見えた時だと思うんです。外面的なチャレンジでなくて。
今作ではディカプリオはただただ身体を張ってるだけ。もっとグラスの葛藤みたいなのがあればいいんですが、もはやこのキャラクターは怖いもの知らずなので、彼の生きたいという願望が作品を盛り上げるのにうまく機能していないことは明らかです。

ただこれってディカプリオのせいというよりは、ただ単純に演出が彼の演技に追いついていないだけなんですよね。それならそれできちんと彼を抑えるべき。
これなら『ディパーテッド』や『ウルフ・オブ・ウォールストリート』の時のほうがオスカーにふさわしい演技だったと言えます。

まぁ悪口ばかりになってしまいましたが、これは個人的な好き嫌いの基準なので…。
もちろん客観的に見て今回も安定の演技だったのはたしかです!
ほかの出演者たちも芸達者。
トム・ハーディも憎い悪役を熱演。ドーナル・グリーソンも出演時間短いながらかなりいい味出してました。

さてこの作品の一番のみどころは何と言ってもカメラです!
DPは『バードマン』に引き続きイニャリトゥ監督と2度目のタッグのエマニュエル・ルベツキ
全編にわたって、本当に美しいシネマトグラフィーで我々の目を楽しませてくれます。
なめらかな移動ショットの美しさから、自然光を用いたライティング、そしてうっとりするような引き画の荘厳な雰囲気まで、雪山という極限まで色を排除したセッティングだからこそ味わえる撮影の妙味を存分に堪能させてもらいました
さらにこの作品ではARRIのALEXA65が使われ、その圧倒的高解像度は雪山の冷たい空気感さえも捉えています。ちなみにこのカメラ、たしか『ミッション・インポッシブル/ローグ・ネイション』の一部でも使われていましたが、メインとして使われるのはこれがもしかして初…?ちょっと定かじゃないですが…。

というわけでこれは今年のオスカー撮影賞獲りますよ。この人、3年連続でオスカーもらいそうです。すごい!


まとめると、話題になってるだけあってやはりしっかり作り込まれており、見応えはバッチリです。ただ演技に頼りすぎな映画があまり好きじゃない僕のような人間からしたら、もう少し劇中のキャラクターとかドラマで魅せて欲しかったかな、というのが本音です。

ただ先にも述べた通り、エマニュエル・ルベツキの美しい撮影は必見です!これを観るためだけでも、ぜひ劇場へ!

トレーラー

IMDb            8.3/10
Rotten Tomatoes        80%
metacritic           77/100

日本公開:2016/04/22

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