2016/04/30

"Green Room" 『グリーンルーム』

監督:ジェレミー・ソルニエ
出演:アントン・イェルチン、イモージェン・プーツ、パトリック・スチュアート
撮影:ショーン・ポーター
音楽:ブルック・ブレア、ウィル・ブレア
94分

痛い描写めっちゃ多いけど、バイオレンススリラーの佳作です!

地方行脚をしながら小銭を稼ぐインディパンクバンドの「エイント・ライト」。彼らはわざわざ赴いた田舎町でのギグがガソリン代にもならないことを知り、もう一つのパフォーマンスを近場のバーですることを決意。しかしそのバーには大きな秘密が隠されていた。


正直僕も何を思ってこれを観に行ったのか思い出せないんですが、観に行って良かったと思います。
とても良くできたバイオレンススリラーです。

ネタバレしないと話せないんで以下ネタバレで…。


まずトレーラー観ても正直よく分からないんで、ざっくりとお話を説明すると、ようはこのバーの一室で起こった殺人を目撃してしまった主人公たち一行がその部屋に閉じ込もり、何事もなかったかのようにしたいこのバーの経営者(パトリック・スチュアート)と血みどろの戦いを繰り広げる、というのが大まかなあらすじ。

さてこの映画が普通の映画よりもバイオレントになり、さらにちょっとしたツイストにもなる要素が、この悪者たちがまさかのネオナチだということ!
 ていうかこのバー自体、ネオナチ向けのそれ(そんなのあるんか!?)。

というわけで手下たちは赤い靴ひものブーツを履き、命を捨ててまでもボスであるバーのオーナーに忠誠を誓っており、彼らはまったく手段を選びません。

そしてそんな彼らは殺人犬からマチェーテ、散弾銃、ナイフなど明らかに苦しんで死ぬ類のものばかりを使って主人公たちを徹底的に追い詰めます。

そんなネオナチ集団に対抗するのが不運なエイント・ライトの一行。
彼らは実質的に武器無しながらも生き残るために捨て身で抗います。

そんなん勝ち目ないやん、とお思いでしょうが…そうです、当たりです笑
というわけで彼らからはそれはもうたくさんの死人が出ます。
正直、この「誰が死ぬか」に演出的ヒントがまったくないので、単純に見ていてハラハラしっぱなしです。次は誰がとかいつ死ぬのか、はたまたどうやってとか、もまったく予想外。

それぐらい結構唐突に死んだり残酷な死に方をすることが多いので、本当にもう緊張しっぱなし。


さてこの作品の一番よかったところは、その空気感でしょう。

作品のというよりは画面の、と言ったほうがいいかもしれませんが、巧く計算された不快さと汚さが見事に画面に刻み込まれています。
ライブハウスのシミから、レッドネックたちのビール臭そうな体臭までそれらが画面からまるで匂ってくるかのように見事に切り取られています。

その一方でライブハウス外の森の描写なんかはかなりリラクシング。

これによって、外に出ようとする主人公たちと中に入ろうとする悪人たちの、外と内のコントラストが見事に画面でも構築されているのが分かります。

そしてそれをさらに助長するのが暴力の描写。
これがもうまったく遠慮がありません
笑いにも逃げず、変に隠してレイティングを気にすることもありません。

この徹底した写実的描写がこの作品の大きな強みになっているというか、ここで強く観客にいい意味での圧力(閉塞感とでもいうのかしら)を与え続けることに成功しています。


監督のジェレミー・ソルニエは前作『ブルー・リベンジ』がかなり評価され、今もっとも注目すべき若手映画監督の一人となりましたが、本作でもその手腕の確かさを証明する形で非常に良くできた佳作を生み出しました。

そして俳優陣で光っていたのがパトリック・スチュアート。この人、別に大声を上げるわけでも実際にこの人が人を殺すわけでもないのに、もう雰囲気から怖いです。
何もしない怖さとでも云うんでしょうか。

そして初めて見たんですが、マネージャー役のメイコン・ブレア、めちゃくちゃ良かったです!
この人だけが唯一この作品で2つの勢力の真ん中で揺れているキャラ。
ようするに一番人間くさいんです。こんだけお互い殺す殺されるの関係の中でひとり殺人以外の方法を考えている彼を好きにならない人はいないでしょう。

正直主人公たちよりもこの人に最後まで生き残って欲しいと上映中ずっと思っていました笑

ただこの作品どうにもキャラクターのデヴェロプメントがうまくいっていないところがあり、というのもメイコン・ブレアのキャラクターは好きにはなりましたが、そのキャラのことをケアするまでにはいきませんでした。
一番のお気に入りキャラがそんなもんだから、この映画に出てくるすべてのキャラがそう。
正直、キャラクターが生き残ろうと死のうとあんまり気にかけてない自分がいることに気がつきます。

ただそれがもし監督の意図で、キャラクターよりもサスペンス、スリラーに重点を置いた構成であるならば成功と言えるでしょう。

僕の本音ではもっとキャラクターをしっかりさせて欲しかったけどね笑


まとめると、低予算ながら非常によくできたバイオレンススリラーでした。

ただ普段映画を観慣れてる自分のような人間でもちょっと「うっ」となるようなイタい描写が結構あるので、そういうのが苦手な方は控えた方がいいでしょう…笑

大丈夫な方はぜひ!


トレーラー

IMDb           7.4/10
Rotten Tomatoes       87%
metacritic         78/100

日本公開:2017/02/11

追記:
2016/10/04 - 邦題、日本公開日変更しました。

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